奔豚気を邪論ではどうするの?

 最近の臨床で目立つのは、奔豚気の患者さんが多いことです。

 腎の守りが弱くなって虚熱が急に吹き上がってしまい、心があおられて急に動悸がしますから「このまま心臓が止まって死んでしまうのではないか?」と、パニックになって当然の症状が出ます。その他に精神不安定はもちろん、胸がつかえたり頭痛がしたり耳鳴りなど、とにかく不安を抱え込んでしまいます。そして病院の検査では何も判明しませんから、余計に不安になってしまいます。

 この奔豚気は鍼が得意とする病であり、現代では経絡治療しか回復の手段がないでしょう。ところが邪論だけに足場を置いて治療を組み立てると、この対処はできなくはないにしてもかなり遠回りをしてしまいます。私は気血津液論と邪論の治療、どちらも平行して使い分けていくのがいいのではと追試中です。